萬覚書

Carpe Diem. Seize the day.

「覚悟をしておけ」

残業中、上司から呼び出されたので、"仕事"を進める同僚のデスクを縫うように彼と個室へ向かった。伝えられた内容は以下。

 

「事務作業を一通り覚えて慣れてきたら、下っ端の作業もほどほどにして、本業に集中してもらいたい。俺が教えるレベルはこの会社のスタンダードではなく、あくまでGS(=ゴールドマンサックス)で通用するレベル。そのために計画も立てている。全てできるようになったら、GSでも商事でもどこへでも一人立ちしてほしい。とりあえず俺が言った本を何度も読んで全て覚えて、財務分析と会計と英語は自分で勉強しろ。これからはみっちり知識を詰めていくし、本格的に高い水準を求める。めちゃくちゃ勉強してもらうから、覚悟をしておけ。」

 

俺はその都度淡々と返事をして、「何かある?」と聞かれても「特にありません」と答え、傍から見て怪しい密談はコンパクトな形で終わった。

 

俺が淡泊だったのは、上司の言葉が嫌でもうっとうしいからでもない。清潔且つ空調の効いたオフィスで働き、事務作業が大幅に減ったことで本業に集中できる時間が大幅に増え、テレワークや休暇を柔軟に組み込み、同僚がまとも且つ互助的なためストレスがなく、優秀な上司に上記のようなことを言ってもらう今の俺の境遇の中で、俺がトップオブトップまで到達するのに必要なことは、"俺の努力のみ"という、きわめて単純明快な答えに容易に辿り着いたからである。長渕剛風にいうと「やるなら今しかねぇ」だけの問題なのである。五輪サッカーにおけるスペインに敗れた後のインタビューで、キャプテンとして3位決定戦へ意気込む吉田麻也のような顔つきで。

 

いや、今でもやってないわけではない。会社での昼休みも、通勤電車の中も、休日も知識の吸収をしているし、専門家としてのスキル向上に励んでいる。但し、上に行くには他の人と同じ成長曲線を辿ってはダメで、やはり質と量をさらに上げていかなければならない。

 

都心のオフィスで頭脳労働によるバリューを生み出し年収2,000万稼いで、大野将平のように体を鍛え上げ、自然が欲しくなったら伊豆へ爆速ドライブを敢行し箱根でひとっ風呂浴びる生活でありたい。